東日本大震災の記憶をどう残していくか。2018年、福島県に設置された現代美術家ヤノベケンジさんの像「サン・チャイルド」が、批判を受けて撤去されるというニュースを目にしました。
今回は、この撤去問題を通して感じる「記憶の風化」への危機感について、私なりの思いを綴ります。
「サン・チャイルド」が表現したかった未来
「サン・チャイルド」は、放射線の心配がない未来を願って作られた像です。黄色い防護服を着てはいますが、ヘルメットを脱ぎ、胸のガイガーカウンターは「000」を示しています。
この「000」という表示には批判もあったようですが、制作者のヤノベさんは大学教授という立場の方です。自然界にも放射線は存在し、物理的に「000」にはならないことなど百も承知の上での表現でしょう。ヘルメットを脱いでいる姿も、「防護服がいらない世界」への希望を表しているのだと私は受け止めました。
アートは「現代のゲルニカ」になれたのではないか
この作品は、パブロ・ピカソがスペイン内戦の悲劇を描いた「ゲルニカ」と同じ役割を担えるものだったのではないでしょうか。無差別爆撃の惨状を後世に語り継ぐゲルニカのように、アートには事実を超えて人々の心に訴えかける力があります。
「風評被害を助長する」という声に押されての撤去は非常に残念です。阪神・淡路大震災を身近で経験した私としては、こうしたモニュメントは、できるだけ分かりやすい形で残していくべきだと考えています。
あなたは「あの日」の正確な日付を言えますか?
なぜなら、どれほど衝撃的な出来事であっても、人の記憶は驚くほどあっという間に風化し、埋もれてしまうからです。
ここで皆さんに問いかけたいのですが、あなたは「阪神・淡路大震災」が何年の何月何日に起きたか、正確に言えますか?
2011年3月11日の東日本大震災についても、あと数年もすれば「あったこと」は覚えていても、具体的な日付を忘れていく人が増えるでしょう。今、テレビで「記憶に残していくことが必要だ」と訴えている人たちのうち、どれだけの人が阪神・淡路大震災の日付を即答できるのでしょうか。
風化に抗うために
阪神・淡路大震災が発生したのは、1995年(平成7年)1月17日です。
20年以上の歳月が流れ、街の傷跡は消えていきました。しかし、日付を覚えている人はどれほど残っているでしょうか。人は忘れる生き物だからこそ、記憶を繋ぎ止めるための「形」としての表現やアートは、後世に残すべき大切な財産なのだと私は思うのです。






