笠岡市立竹喬美術館をぶらりと訪れた際、一枚のポスターに目が留まりました。そこには『夏のコレクション』と書かれた華鴒大塚(はなとりおおつか)美術館の文字。そのまま誘われるように、井原方面へと車を走らせました。

今回は、笠岡から井原まで、岡山のアートを存分に堪能した一日を振り返ります。

一日で巡った「岡山の文化スポット」

気がつけば、一日のうちにこれだけの施設を巡っていました。

  • 笠岡市立竹喬美術館(小野竹喬の繊細な色彩に触れる)
  • 笠岡市立カブトガニ博物館(生きた化石に出会える)
  • 井原市立田中美術館(近代平櫛田中の彫刻の迫力)
  • 華鴒大塚美術館(『夏のコレクション』を開催中)

どこも撮影禁止なのが惜しいほど素晴らしい作品ばかりでした。せめて、展示されている全作品のポストカードや葉書が充実していれば、この感動をそのまま持ち帰れるのに……と願わずにはいられません。

中村大三郎『白容』が運んできた「涼」

華鴒大塚美術館に入ってすぐ、お目当ての作品に出会えました。中村大三郎の『白容(はくよう)』です。

描かれている女性の瞳はどこまでも涼やかで、白い服の質感からは夏の装いの心地よさが伝わってきます。この絵が家に飾ってあれば、ただ椅子に座って眺めているだけで、冷房がなくても涼しく過ごせそうな気がしてくる……そんな不思議な力を持った作品でした。

児玉希望『良宵』:月光に吸い込まれる「ピント」の魔法

今回の展示で、特に心を奪われたのが児玉希望の『良宵(りょうしょう)』という作品です。

海に浮かぶ舟と、その真上に輝く月。月の光は決して強くはなく、すぐに周囲の宵闇へと溶け込んでしまいます。しかし、その淡い光が、月の真下に浮かぶ一隻の舟だけを静かに、けれど確かに照らし出しているのです。

他の舟は薄闇に隠れているため、鑑賞者の意識は自然とその一隻へと吸い込まれていきます。細部まで極めて緻密に描かれながらも、月と舟という一点に「眼が持っていかれる」構図の妙。まるで絵画の中に、作者が仕掛けたピントの魔法があるかのような、見事な作品でした。

おわりに

風景画が多めのコレクションでしたが、その分、自然の光や空気をじっくりと感じられる時間となりました。岡山にはまだまだ、私たちの知らない名作が静かに眠っている。そんなことを再確認させてくれた、充実した夏の一日でした。