現代社会では、娯楽の選択肢が溢れ、読書に時間を割く人が減っています。日本では1日に1店舗の書店が閉店しているという現状も、読書離れを物語っているでしょう。映画1本分の時間で読み切れない本は、忙しい現代人にとって敬遠されがちです。特に専門書となると、読み終えるまでに半日以上かかることも珍しくありません。
速読のメリットと一般的な読書との違い
この「時間の壁」を乗り越える有効な手段の一つが速読です。速読とは、文字通り速く本を読む技術であり、訓練によって誰でも習得できます。テレビなどで速読ができる人と一般の人が同じ本を読む比較テストを見たことがある人もいるかもしれません。速読ができる人は、一般の人が1時間半かかる本を30分ほどで読み終え、内容もしっかりと理解していました。
なぜこれほどまでに読む速度に差が出るのでしょうか? その理由は、視点の動きの違いにあります。
- 一般的な読書: 1行ずつ文字を追い、時には前の内容に戻ったりしながらゆっくりと目を動かします。
- 速読: 数行をまとめて見たり、文字をブロックとして認識したりすることで、視線の移動を最小限に抑えます。文字を画像のように認識する人もいます。
速読の基本的な訓練方法
速読の訓練は、市販の教本でも可能ですが、習得には1ヶ月から半年以上の期間を要することもあります。ここでは、速読の基本的な考え方と訓練方法を簡単に説明します。
速読に必要な要素は以下の4つです。
- 文字を正しく目で追う
- 視覚で捉える範囲を広げる
- 視線の上下移動の速度を上げる
- 文字をブロックとして認識する
1. 文字を正しく目で追う
本を読むとき、私たちは無意識のうちに文章の最後まで目線を送っていないことがあります。脳が文章をある程度補完してしまうため、「〜なのです。」といった部分が省略されてしまうことがあるのです。速読では、文章の最後までしっかりと目線を送ることが重要になります。
訓練方法: 文章の最後の句点(。)まで意識的に目線を送るように読みましょう。
2. 視覚で捉える範囲を広げる
本を読んでいる際、私たちは見ている文字の周辺数文字しか意識できていないことが多いです。速読では、より広い範囲の文字を一度に捉える能力が求められます。
訓練方法: YouTubeなどで「速読 訓練」と検索すると、拡大する円や四角を見る動画があります。これらを毎日繰り返し見ることで、視野が広がっていきます。
3. 視線の上下移動の速度を上げる
速読の速度は、眼球の動きの速さに大きく左右されます。
訓練方法: YouTubeで「速読 視線」と検索すると、小さな玉が上下左右に動く動画や、画面の様々な場所に文字が表示される動画が見つかります。これらを使って眼球を素早く動かす訓練をしましょう。慣れてきたら動画の速度を上げてみてください。
4. 文字をブロックとして認識する
速読の核心は、文字を1文字ずつ読むのではなく、複数の文字をひとまとまりの「ブロック」として認識することです。最終的には文字列を映像として捉えられるようになります。
訓練方法: 本を読む際に、いくつかの文字を塊として認識する意識をしてみてください。最初は黙読しないように意識し、文字を1文字ずつ読んでいないか時々確認しましょう。
速読のメリットを最大限に活かすために
速読の訓練で特に重要なのは、「文字を正しく目で追うこと」と「視覚で捉える範囲を広げること」の2点です。これらは速読に限らず、普段の読書にも役立つ基礎的なスキルなので、身につけて損はありません。
速読を習得すれば、1日に何冊もの本を読み進めることも夢ではありません。しかし、速読には感情を伴う読書には不向きという弱点もあります。感動的な小説などを速読で読むと、文章の意味は理解できても、登場人物の感情に共感したり、涙を流したりといった情緒的な体験が得られにくいことがあります。
このような場合は、速読を使わずにじっくりと読むか、感動しそうな部分だけ通常の読書に切り替えるなど、本によって速読を使い分けることで、どんな本でも最大限に楽しむことができるでしょう。
速読は、忙しい現代において、知識を効率的に吸収し、読書の幅を広げるための強力なツールです。ぜひ、この技術を身につけて、読書の世界をさらに豊かにしてみてはいかがでしょうか。







