2016年、北海道を襲った台風の被害で、日本中の野菜の値段が高騰したのを覚えていますか?なぜ北海道の被害が全国の野菜価格に影響するのか、疑問に思った方もいるかもしれません。実は、北海道は「日本の食料供給基地」と呼ばれるほど、多くの野菜を生産しているからなんです。

たとえば、私たちにとって身近なお米。意外かもしれませんが、日本で一番お米を生産しているのは北海道なんです。初めてこの事実を知った時は、「え、お米って新潟じゃないの?北海道って寒い場所だから難しいんじゃない?」と驚きました。しかし、これもお米の品種改良の賜物だそうですよ。

他にも、ジャガイモ、ニンジン、トマト、小豆、メロン、だいこん、大豆、かぼちゃ、ねぎ、スイートコーンなど、本当にたくさんの種類の作物が北海道で作られています。そしてもちろん、今回注目する玉ねぎも、北海道が生産量日本一を誇っています。

玉ねぎと日本の意外な歴史

食用としての玉ねぎの歴史は古く、世界では紀元前から食べられていました。キリスト教よりも古い歴史を持つ玉ねぎが、日本に伝わったのは意外にも最近。わずか200〜300年前の江戸時代に入ってきたとされています。

江戸時代といえば鎖国をしていましたが、オランダとの交易があったため、意外と外国の野菜や文化が流入していました。しかし、当時の玉ねぎは残念ながらあまり人気がなかったようです。日本料理の代表格である懐石料理に、ほとんど玉ねぎを使った料理がないことからも、その不人気ぶりがうかがえます。

では、なぜ現代の私たちはこれほど玉ねぎの多様な食べ方を知っているのでしょうか?そこには、玉ねぎが人気を得るきっかけとなった、ある「事件」がありました。

人気のなかった江戸時代が終わり明治時代に入った明治26年、大阪でコレラが大流行します。そんな中、「玉ねぎがコレラに効く」という噂が広まり、これを機に玉ねぎが食べられるようになりました。

「本当に玉ねぎがコレラに効くの?」と疑問に思うかもしれません。実は、効くんです! 玉ねぎに含まれるチオスルフィネートという成分には殺菌効果があり、この成分がコレラにも効果があると言われています。

こうして、現在のようにスーパーで常に玉ねぎが手に入るようになりました。ちなみに、日本の玉ねぎの50%以上が北海道で生産されています。

玉ねぎ、もっと美味しく食べるには?

果物や野菜は、基本的に一年中スーパーで手に入りますよね。もちろん、時期によって値段は変わりますが。

さて、玉ねぎの旬はいつかご存知ですか?

答えは、実は秋が旬なんです。一年中食べられる野菜なので、知らない人のほうが多いかもしれませんね。

では、もう一つ質問です。お店で玉ねぎを見ていると、たまに「新玉ねぎ」という普段の玉ねぎとは別に売られているのを見たことはありませんか?あれって、普段の玉ねぎとどう違うのでしょう?

答えは、普段食べている玉ねぎは葉っぱが枯れてから収穫したもので、新玉ねぎは葉っぱがまだ青々としている状態で収穫したものなんです。新玉ねぎの方が値段が高いので、どちらを買うべきか迷ってしまうこともありますよね。

「どちらが美味しいの?」と。

実は、新玉ねぎと普通の玉ねぎは、食べ方によって美味しさが変わってきます

まずは、新玉ねぎと普通の玉ねぎのおおまかな違いを見てみましょう。

新玉ねぎは…

  • 葉っぱが青々としているときに収穫
  • 収穫したらすぐにお店に並ぶ

普通の玉ねぎは…

  • 葉っぱが枯れてから収穫
  • 収穫してから「寝かせる」期間がある

新玉ねぎと普通の玉ねぎの違い、ご理解いただけましたか?

「寝かせるって何?」と疑問に思うかもしれません。野菜は新鮮さが大切だと誰もが知っていますからね。しかし、玉ねぎを「寝かせる」ことには大切な意味があります。それは、玉ねぎの糖度を増やすことなんです。不思議に感じるかもしれませんが、「寝かせる」という行為は、実は玉ねぎを冬眠させるということ。

玉ねぎは、新しい芽を出すために蓄えたデンプンを糖分に変え、次の芽を出すためのエネルギーにしようとします。この性質を利用して、玉ねぎをさらに美味しくしているんです。

「玉ねぎを寝かせると美味しくなるなら、新玉ねぎも寝かせればいいじゃないか」と思うかもしれません。しかし、そうはいかないんですね。玉ねぎは寝かせると糖度以外にも増える成分があります。それが「プロパンチアールS-オキシド」という成分です。この成分は玉ねぎの辛味を増やす成分なので、普通の玉ねぎを生で食べると、その辛味が強く、寝かせる前の2倍にも増した糖度を感じにくく、辛さだけを感じてしまいます。

それに比べて新玉ねぎは寝かせていないので、生でも美味しく食べることができます。では、普通の玉ねぎはどのように食べれば美味しいのでしょうか?「プロパンチアールS-オキシド」という成分は、加熱することでほとんどなくなります。そのため、焼き肉やバーベキューのように熱を加えると効果的です。

だいたい3分程度熱を加えるだけで、「プロパンチアールS-オキシド」はほとんどなくなります。つまり、普通の玉ねぎは加熱調理に向いているということですね。

まとめ

  • 新玉ねぎは、サラダのように生で食べるのがおすすめです。
  • 普通の玉ねぎは、加熱する料理、特に熱をしっかり加える料理で食べると、新玉ねぎの2倍の糖度を存分に楽しむことができます。

追伸
普段スーパーで売られている玉ねぎは寝かせてあるものなので、傷む前に早めに召し上がってくださいね。